harenotchy’s diary

つれづれと日々の詩を書きます

ヘアサロンにて

さあ、 私の一年半ぶんの 重みを とりのぞいてくださいな、 美容師さん さっきのお客さんは 一か月ごとに髪を切るそうですね いいんでしょうか 一か月ぶんも一年半ぶんも 同じ料金で ありがとうございます 追加料金なしですね 床にできた 髪の毛の山は 不気…

哲学者が日記を書くと

哲学者が日記を書くと それは詩のようで 詩人が日記を書くと それは哲学のようで どうしてだろう どうしてだろう レバーのくさみを取るために 牛乳にひたすなんてこと 私にはできないよ

身勝手に泣いて 身勝手に笑った

わたしは いつも 相手の気持ちになって かんがえ 行動した この人は こう考えているだろう この人は こう思っているだろう 気持ちをつねに先回り 自分の都合の良いように 先回りしては 一緒に(ひとりで)かなしみ 先回りしては 一緒に(ひとりで)よろこぶ …

夏休みの宿題

夏休みの宿題 ギリギリまでほったらかして 体裁だけ整える感じで さーっと解いて 出した ずっとずっと 答え合わせもせずに そのままだ 間違えたところを正していたら 今ごろ何か変わっていたのかな 夏休みの宿題みたいな人生 何度も何度も繰り返す夏 もうや…

サンドバッグの砂

サンドバッグの中身を誰も知らない サンドバッグの中身はなあに? 「サンド」なんだから、 砂でしょ? ナイフを突き立てると 中から ざあっと 砂がこぼれ落ちるんでしょ ううん それがさ、中身は砂じゃないんだって 何度ボコボコに打たれても うんともすんと…

悲しみは自粛しない

もう動かない祖母を囲んで 集うひとびとの顔は マスクで覆われていて 目だけがすべてを物語る 私の目からも 大粒の涙が流れては マスクの中に消えて行った このご時世なので お葬式も 最小限で 会食も自粛 でも悲しみは我慢しない 悲しみは自粛しない 笑うこ…

さみしいと

さみしいと 言うべき人も いないので 玉ねぎ切りつつ まぎれて涙

息子へ

白い雲が ゆっくりと 流れていくのを 今はただ 見上げているだけだけど もう少ししたら 同じスピードで 歩いていけるだろう そしてあっという間に あの雲よりも 早く早く かけて行くだろう 母は その姿を 後ろから じっと見守ることしかできないだろう 白い…

名札

私という名札をつけて 堂々と歩いていれば 道行くひとに 私の名を呼ばれていた それが当たり前だった いまや 私だけでないたくさんの名札を つけていなければならなくなった いちばん大きな名札は 母親 その次は 妻 そして まだまだ根強い 娘 私はいつしか …

深いスープ皿の底で

深いスープ皿の底で さんかくずわりして 遠い星空を見上げるとき スープが透き通っていれば 光がすっと差し込むし スープがどんよりにごっていれば なかなか光は届かない 暗闇のなかは孤独である からだは冷たく固まっている しかし勇気を持って 水面まであ…

くるしみにくるまれて

くるしみにくるまれて しみしみになる ふかくふかく ねむりにつきたいのに あさいところでぷかぷか ういていなければならない くるしみ くるしい いとしみ こきゅうをととのえて いちにっさんで おきないと うずにのみこまれて おぼれそうになる くるしみに…

まんまるの円の中心に立つ

まんまるの円の中心のように この世のすべてのものごとから 均等に遠ざかっていたいと おもう時がある どこかから遠ざかれば どこかに偏ってしまうから ぐるぐると周りを取り囲むものが しっちゃかめっちゃかやって ピーチクパーチクいってても わたしはこの…

しわしわになるまで

赤ちゃんの肌に ふれながら 思う このやわらかなすべすべの肌が 歳を経てしわしわになるまで どうかどうか 無事生きていてほしい と

偶然のために

いつか どこかの街角で 偶然あなたに再会したい 連絡先が何度も変わって 名前すら頭から消えかかったころに 偶然再会したい あなたに ぼんやりとした昔の面影を 冷たき都会の雑踏に ある日突然見出すことを期待して あなたが通ったかもしれない道を 何度も何…

ティッシュをまるめて捨てる

泣きたい夜は 一枚一枚のティッシュのように 見送ろう くしゃくしゃの笑顔も その裏のくしゃくしゃの心も すべてまとめて さらにくしゃくしゃにして 窓を開けてポイしよう 誰も街をよごすなとも 自分で隠し持ってろとも言わないから どんどんまるめて吐き出…

マスク

マスクがまちを歩いてる まちじゅうマスクだらけ マスクにかくされたもの マスクにおどらされたもの マスクにとってかわったもの すべて ひとのこころです

人間がいないので

人間がいないことに 世界が慣れ始めていた 人間がいないので 公園の主役は鳥たちだった 人間がいないので 空も海ものびのびしていた 人間がいないので 街はどこも美しかった わたしは人間をやめられないので こうした風景にはねつけられて おとなしく家にこ…

ひすい

新緑の中 ベビーカーおして散歩する ふと わが子の顔をのぞき込むと その瞳の中に翡翠があった どんな宝石よりも美しく輝く 翡翠であった

ベンチにすわる

公園にベンチが並んでいる わたしは そのうちのひとつに 腰掛ける だれも何も言ってこない 指定席もない そこにいることそこにあるもの すべてに理由はいらない いいんだよ ここにいつまででもいて いいんだよ 都会の真ん中で よちよち歩いてる ことりを目で…

あしあと

足の裏を 濃い墨で塗り潰しているのか どうしても どこを歩いても 足跡を残してしまう どんなに忍び足でも どんなに爪先立ちしても わたしが訪ねたここそこが すぐに知れてしまう いっそ堂々と あなたにわかるように わたしが歩いてきた道程を しっかり残そう

まだ見ぬきみへ

まだ見ぬきみへ まだ見ぬきみに会いたいと お父さんとお母さんは 空を見ては 手紙をつけた 風船をとばしました 海を見ては 紙片の入った 瓶をながしました ずっとずっと きみをさがしていました きみをまっていました うちへの地図ももっていないのに 風にま…

りんかく

きみを忘れまいと その輪郭を何度も何度も なぞった 目でなぞった 舌でなぞった 指先でなぞった しかし のこったのは 断片的な輪郭線と記憶 いくら組み立てようにも きみはのこらなかった ばらばらになった 頬の丸み 耳のふくらみ でっぱった踵 少しずつ集め…

責任

責任感のある人は 尊敬される ちゃんと責任をとること これがおとなには必要なんだ 責任はずしんと重い 口だけなら簡単だ 持ってみないとわからない 世間がさわぐ 責任者は出てきなさい いけにえのひとりを選びなさい それが責任者です 責任を押し付けられた…

たったひとりの人と

たったひとりの人と ずっと仲良くして生きる たったこれだけのことが 地球上ででもっとも大切で もっともむずかしいことなんだ 世界中の人を救うことより となりにいるたったひとりを 笑わせること その幸せを一緒に探すこと 言い訳せずさいごまで見守ること…

カバン

いつも君と一緒 どこか出かけるときはいつも一緒 地味でひかえめで たいてい ぼくの肩にかくれてる 歩けばうれしそうにはずみ 置いてけぼりにされたら少しかなしい顔する わたし、あなたのお荷物じゃない? と体をずしんと預けてくるが とんでもない、きみが…

とびおりる

わたしは とびおりる わたしは 飛び降りる わたしという じんせいの舞台から。 代役はいまのところ 見つかっていないけど なんとかなるでしょ。 舞台から飛び降りるといったって 清水寺から飛び降りるほどのこともなく 小学校の体育館の小さな舞台の 段差を…

しあわせ

あの頃はしあわせだったね わたしたち。 これからいっしょに しあわせになろうと 誓いあったね。 けど とうとう終いまで いまがいちばん幸せだよとは 言えなかったね。 しあわせは 未来になり 過去になり いつのときもみんなの あこがれとしてあるのに たっ…

月日の流れを凝固させる

いま この瞬間は するすると 流れて行く この手から すり抜けて行く 現実 ひっしにとらえようと するのだけど 写真や映像に 閉じ込めようとすればするほど いまは 逃げて行く それでもこりずに わたしたちは いつか思い出すため いまを残そうとする 月日の流…

花は美しい

愛している 彼はそういって 特定の花を選び ガラスのケースに入れ 毎日愛でた ほかの花をことごとく踏みにじった後に。 ガラスケースに閉じ込めた花は特別 崇高なものとして崇めた たまに道ばたの花に目をくれては その手で無残にむしりとった 美しい花は彼…

麦わら帽子

波打ち際で 笑ったあの子の横顔 大きな麦わら帽子に隠れて 口もとのほころびだけが 風に溶けて消えてった 名前も声も思い出せない 麦わら帽子のあの子 記憶のかなたで 海のかおりとともにぼうっと浮かぶ いつか会う約束 砂浜に棒切れで書いた落書き すぐに波…