harenotchy’s diary

つれづれと日々の詩を書きます

2020-01-01から1年間の記事一覧

息子へ

白い雲が ゆっくりと 流れていくのを 今はただ 見上げているだけだけど もう少ししたら 同じスピードで 歩いていけるだろう そしてあっという間に あの雲よりも 早く早く かけて行くだろう 母は その姿を 後ろから じっと見守ることしかできないだろう 白い…

名札

私という名札をつけて 堂々と歩いていれば 道行くひとに 私の名を呼ばれていた それが当たり前だった いまや 私だけでないたくさんの名札を つけていなければならなくなった いちばん大きな名札は 母親 その次は 妻 そして まだまだ根強い 娘 私はいつしか …

深いスープ皿の底で

深いスープ皿の底で さんかくずわりして 遠い星空を見上げるとき スープが透き通っていれば 光がすっと差し込むし スープがどんよりにごっていれば なかなか光は届かない 暗闇のなかは孤独である からだは冷たく固まっている しかし勇気を持って 水面まであ…

くるしみにくるまれて

くるしみにくるまれて しみしみになる ふかくふかく ねむりにつきたいのに あさいところでぷかぷか ういていなければならない くるしみ くるしい いとしみ こきゅうをととのえて いちにっさんで おきないと うずにのみこまれて おぼれそうになる くるしみに…

まんまるの円の中心に立つ

まんまるの円の中心のように この世のすべてのものごとから 均等に遠ざかっていたいと おもう時がある どこかから遠ざかれば どこかに偏ってしまうから ぐるぐると周りを取り囲むものが しっちゃかめっちゃかやって ピーチクパーチクいってても わたしはこの…

しわしわになるまで

赤ちゃんの肌に ふれながら 思う このやわらかなすべすべの肌が 歳を経てしわしわになるまで どうかどうか 無事生きていてほしい と

偶然のために

いつか どこかの街角で 偶然あなたに再会したい 連絡先が何度も変わって 名前すら頭から消えかかったころに 偶然再会したい あなたに ぼんやりとした昔の面影を 冷たき都会の雑踏に ある日突然見出すことを期待して あなたが通ったかもしれない道を 何度も何…

ティッシュをまるめて捨てる

泣きたい夜は 一枚一枚のティッシュのように 見送ろう くしゃくしゃの笑顔も その裏のくしゃくしゃの心も すべてまとめて さらにくしゃくしゃにして 窓を開けてポイしよう 誰も街をよごすなとも 自分で隠し持ってろとも言わないから どんどんまるめて吐き出…

マスク

マスクがまちを歩いてる まちじゅうマスクだらけ マスクにかくされたもの マスクにおどらされたもの マスクにとってかわったもの すべて ひとのこころです

人間がいないので

人間がいないことに 世界が慣れ始めていた 人間がいないので 公園の主役は鳥たちだった 人間がいないので 空も海ものびのびしていた 人間がいないので 街はどこも美しかった わたしは人間をやめられないので こうした風景にはねつけられて おとなしく家にこ…

ひすい

新緑の中 ベビーカーおして散歩する ふと わが子の顔をのぞき込むと その瞳の中に翡翠があった どんな宝石よりも美しく輝く 翡翠であった

ベンチにすわる

公園にベンチが並んでいる わたしは そのうちのひとつに 腰掛ける だれも何も言ってこない 指定席もない そこにいることそこにあるもの すべてに理由はいらない いいんだよ ここにいつまででもいて いいんだよ 都会の真ん中で よちよち歩いてる ことりを目で…