harenotchy’s diary

つれづれと日々の詩を書きます

ヘアサロンにて

さあ、

私の一年半ぶんの

重みを

とりのぞいてくださいな、

美容師さん

 

さっきのお客さんは

一か月ごとに髪を切るそうですね

 

いいんでしょうか

一か月ぶんも一年半ぶんも

同じ料金で

 

ありがとうございます

追加料金なしですね

 

床にできた

髪の毛の山は

不気味なので

振り返らずに帰ります

 

身勝手に泣いて 身勝手に笑った

わたしは

いつも

相手の気持ちになって

かんがえ

行動した

 

この人は

こう考えているだろう

この人は

こう思っているだろう

 

気持ちをつねに先回り

 

自分の都合の良いように

 

 

 

先回りしては

一緒に(ひとりで)かなしみ

 

先回りしては

一緒に(ひとりで)よろこぶ

 

 

 

そう

身勝手に泣いて

身勝手に笑っていた

 

わたしは

一人芝居のようだった

夏休みの宿題

夏休みの宿題

ギリギリまでほったらかして

体裁だけ整える感じで

さーっと解いて

出した

 

ずっとずっと

答え合わせもせずに

そのままだ

 

間違えたところを正していたら

今ごろ何か変わっていたのかな

 

 

夏休みの宿題みたいな人生

 

 

何度も何度も繰り返す夏

 

もうやり直しが

ゆるされる年齢でなくなった

サンドバッグの砂

サンドバッグの中身を誰も知らない

 

サンドバッグの中身はなあに?

 

「サンド」なんだから、

砂でしょ?

 

ナイフを突き立てると

中から ざあっと

砂がこぼれ落ちるんでしょ

 

ううん

それがさ、中身は砂じゃないんだって

 

何度ボコボコに打たれても

うんともすんともいわない

打てば打つほど

固く重くなっていく

 

あんなに痛めつけられたら

なんだかとっても

かわいそう

 

 

こっそりこっそり

真夜中に

中身を砂に入れ替えておこう

 

 

どうせ誰も

サンドバッグの中身を

知らないのだから

悲しみは自粛しない

もう動かない祖母を囲んで

集うひとびとの顔は

マスクで覆われていて

目だけがすべてを物語る

 

私の目からも

大粒の涙が流れては

マスクの中に消えて行った

 

このご時世なので

お葬式も

最小限で

会食も自粛

 

でも悲しみは我慢しない

  悲しみは自粛しない

 

笑うこと悲しむこと怒ること

 

それだけは奪われない